その1 ぼくは…
ぼくは傷の手当をし、少し家事を、いちばん急を要することをした。事実、もう少しでなにもおこらなかったと思いそうだった。ぼくはチリを鍋に戻し、弱火にかけた。そしてまた音楽をかけた。猫が窓から入ってきて、夜は静かだった。「灯りが見えたけど」猫が言った。「書いているところだったの・・・・・・?」
「いや」ぼくは言った。「考えていたんだよ」
(フィリップ・ディジャン、三輪秀彦訳『ベティ・ブルー』ハヤカワ文庫、1987)
※この物語が閉じられる前の、最後の5行。そして一番好きな場面。
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