37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

7月

ゆるゆると7月が終わる。

桜庭一樹『私の男』

もう今年のベスト1に巡り会ってしまったかも知れない。花は充たされていていいなぁ。神様=おとうさんがいていいなぁ。血の人形として造ってもらっていいなぁ。でも、神様だって自分で自分は救えない。だから、淳悟はどこにいけばいいのだろう。どこにいるの…

土曜日は隅田川の花火を見に行ってきました。場所は苦手な人混みを避けた屋上にて。 色とりどりの大輪の焔の華が咲いたあとは、ふたたびまっ暗な闇が東京の夜空を満たした。まるでなにもなかったかのように。嘘のように静かな空。でも、さっきまで鮮やかに闇…

人って衝動的に死ねるんだろうか。それとも、衝動的にしか死ねないもの? ソクラテスみたいに醒めながら死ねた人は、近頃どれだけいるのだろう?

あなた方の/立場からみれば、 わたしは/2つの世界を/つなぐ者。/言葉のある世界と/ない世界の あなた方の世界は/"有限"。 わたし達の世界は/"無限"。 あなた方の/言葉は/ありとあらゆる/可能性を/特定の性質に/切り分けるナイフ。 自分たちの/都合のいいよ…

心地よい酩酊

エールを飲んで、日本酒6種類試飲して、グレンフィディック、マティーニ、最後はBETWEEN THE SHEETS。久々にお酒を飲みました。ほどよい緊張感と少し体調が良ければ、まだ美味しく飲むことが出来るのが嬉しい。心地よい酩酊とどこかで醒めていく神経。素敵な…

桜庭一樹『ブルースカイ』

「わたし、あなたの、願いを叶える」 クリスティーネは落ち窪んだ瞳でわたしを見上げた。わたしは続けた。 「もっと、ずっと幼いころから、わたしはあなたに敬意を感じ続けてきた。あなたの美しさと善良さに憧れていた。わたし、約束する」 「マリー……」 「…

アンナ・カヴァン『氷』

力を使い果たした少女は、もう終わりだ、起き上がれない、これ以上走れないと思う。だが、緊張しきった肉体は、容赦なく少女を立ち上がらせた。抵抗しえない運命の磁力に引かれて、少女は否応なく進みつづけなければならなかった。少女が最も弱く傷つきやす…

リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』

ヴァイダは自分の体に向かって、雨が降るときのような身振りをしながらいった。「これはわたしじゃありません。それがやることに対して責任を負えるわけがないでしょう。ほかの人からなにかを得ようとしてこの体を利用する気はありませんし、そんなこと一度…

村上春樹『太陽の南、国境の西』

「私はここに来るか、あるいはここに来ないかなの。ここに来るときにはわたしはここに来る。ここに来ないときは――わたしは余所にいるの」「中間はないんだね」「中間はないの」と彼女は言った。「何故なら、そこには中間的なものが存在しないからなの」 (中…

悪しき多元宇宙

藤子の考えているのはいわゆる多元宇宙であり、彼女は時間旅行者としての自分の存在が、つまり彼女の時間旅行が、多元宇宙の発生につながっているのではないかと疑っているのである。そして藤子は、自分の新しく発生させた宇宙が、悪しき宇宙に違いないとい…

あなたは実存と観念の両方がないとだめなんだね、とは先生の言葉。そのふたつが、お互いに互いを補足しあい、より遠くにいかせてくれることを知ってしまったら、もとめずにはいられない。経験を積みかさね磨かれた感覚は、ますます想像力を刺激し、とめどな…

「夜のたびに、明日の朝は、きっと死んだまま眼を醒ますに相違ないと思いながら寝て、眼が醒めると「ああ、まだ生きていたわ」とそれが不思議で仕方がないように呟くのがこの頃の阿字子の癖になった」 ――野溝七生子『山梔』より昨日の朝は37℃。夜には35℃台に…

ものがたりのちから

ねむれなくて 読み出した手がとまらず、明け方、3時間ほどで一気呵成に読み下ろした物語の力に圧倒されている。 いままで自分のなかにあった物語すべての力が消えてしまったかのような衝撃があって、その虜になっている。 その物語がほんとうに真っ当で清ら…