37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

2007-01-01から1年間の記事一覧

「海を飛ぶ夢」

「生きることは権利だが、わたしには義務だった」 尊厳死を求める四肢が麻痺した主人公ラモン*1と、その弁護を申し出た女性弁護士フリア。彼女もまた、決して治ることのない病に苦しみ、ラモンとともに尊厳死を決意する。ラモンの詩集ができあがったらそのと…

本の整理

先週の日曜日から本の大整理を始めました。やる気があるうちにいろいろしておくつもり。

夜あけまでのひととき、暗い暗い夜のうちに、全てから魂を解き放たれたわたしは息を潜めながら、世界の秘密を書くことによって暴き出そうとする。魂の闇、生と死、光と影のコントラスト、腐肉のうちに宿る不滅のもの、永遠の名の下にうつろい消えてゆくもの…

山荘綺談[本]

……今度こそ大丈夫だわ――ハンドルを切って車道のまがりかどに立っている大きな木をめがけて真一文字に車を走らせながら彼女は思った――今度こそ大丈夫……今度こそとうとうあたしは一人でやってるんだもの……あたしがよ……今度こそ、今度こそ、今度こそ、あたしが…

ずっとお城で[本]

「あたし、ほんとに幸せ」あえぎながら、ようやくコンスタンスが口をきいた。「ほんとに幸せよ、メリキャット」「だから言ったでしょ、月の上の暮らしが気にいるよ、って」 (シャーリィ・ジャクスン/山下義之訳『ずっとお城で暮らしてる』学研ホラー文庫、1…

ヴェイユ[本]

どうかわたしは消えて行けますように。今わたしに見られているものが、もはやわたしに見られるものではなくなることによって、完全に美しくなれますように。 (シモーヌ・ヴェイユ/田辺保訳『重力と恩寵』ちくま学芸文庫、1995) いままでよりいっそうヴェイ…

水妖記[本]

「魂って可愛ものらしいのね。でもまた、何かとても恐ろしいものに違いないわ。司祭さま、本当に魂なんか、いつまでも無いほうがいいんじゃないかしら。」 「魂って重い荷物に違いないわ。とても重いものに違いないわ。だって、そのかたちが近づいて来るだけ…

ステーシー[本]

詠子の笑顔は、ステーシー化する直前に少女たちが見せる典型的な表情だった。まるでこれから観覧車にでも乗り込むかのように、少女たちは死を前に何故かしら多幸感に包まれた笑顔を見せる。これから自分の肉体が、歩きまわる忌まわしい屍となることがわかっ…

葬儀の日[本]

「本当に楽か?」灰色の髪の男が言った。 「疲労を感じさせないところが罠なのさ。まだわからないだろうけれど。聞け。そいつを知ったことでおまえは充足する。有頂天になる。満たされる。おまえの言う欠如感覚が消えるからな。だが同時にもうそれ以上身動き…

マダム・エドワルダ[本]

まったく思ってもみなかったことなのに、断末魔の時が始まっていることを私は「知っていた」。私は苦しみを受けいれ、苦しみたいと思い、もっと先まで行きたい、うち殺されてもいいから、「空虚」のなかにまで行きたいと願った。私は知っていた、知りたかっ…

蜜のあわれ[本]

「あたい、何時死んだって構わないけど、あたいが死んだら、おじさまは別の美しい金魚をまたお買いになります? とうから気になっていて、それをお聞きしようと思っていたんだけれど。」 「もう飼わないね、金魚は一生、君だけにして置こう。」 「嬉しい、そ…

書いていた日記をアップしました。昨日はいろいろなことがありすぎて、こんなことでシンクロニシティなんて起きずにいいのに。呼吸、止まってしまえばいい。 今日はロールシャッハの結果を聞きにお出かけです。3時間ちかくもかかってしまったこのテスト、正…

[言葉]

「マーガレットがどうしたんだ?」と兄さんがいった。「おしえてくれ」「死んだ」とフレッドがいった。「どんな風に?」「首を吊ったんだ」マーガレットの兄さんは、ほんのしばらく、じっとまっすぐ先を睨むようにしていた。目が曇ったようだった。誰も何も…

[言葉]

「なにを考えているの、ジェニー」わたしは訊ねた。 彼女はゆっくりと静かに答えた。 「この世の中が何てきれいだろうと考えていたのよ。そして、わたしたちに何も起こらないでいつまでこの美しさがつづいていくだろうかと考えていたの。春は毎年毎年、わた…

水曜日は発熱してしまったため、会社を休んでしまう。それでも、風邪薬にいつもお薬を飲んでしまったら、少々強すぎたのか、実は記憶があまりありません。でも、あの懐かしい多幸感に襲われて涙は出ない。出なかった。

発熱してしまって、自宅にて少しメール作業をした以外はお休みする。でも苺の魔法のおかげで元気。ホットミルクと風邪薬と一緒に横になっていました。病院で、悩まされっぱなしの頭痛の特効薬も一緒にいただいてきました。この頭痛、神経なぞないくせに脳が…

日曜日は夕方から気分転換に猫町散歩。とはいっても、最近さむいせいか、野良猫をとんとみかけません。何処に消えちゃったんだろう。 ふらりとはいった中古CD屋さんは意外とプログレッシヴというジャンルのものがたくさんあって、詳しくなんて知らないけれ…

金曜日の晩

金曜日の晩はまたおうちにかえれない病がでて、夜遅く(それでも一杯飲んだら帰るという約束で)渋谷の猫バーに寄る。優雅な黒猫が、店内と往来を自由に行き来している愛猫家にとっては素敵な処。気が向いたら、そのつやつやした毛並みを触らせてもくれたり…

夢の音

ばたばたと夢を閉じる音がする。それは恩寵に充たされた真空にまで響いてくる唯一の音。あわてて耳を塞いでも、聞こえてくる音の大きさに今日はたちすくみつづけている。

奇跡のとおさ

真夜中にふと目覚めればきづいてしまう 奇跡のとおさ(いいえ、そんなものは最初からなかった) まっくらな部屋の空気にさらされた鼻先がかすかに冷たくなっているのにきづいて あわててふとんをかぶりなおす たったいま消えていったものの残り香をなつかし…

「Picnic at hangingrock」

山で何があったのかはわからないまま。それで、わたしたちは、勝手な想像をめぐらす。消えてしまったひとりの女教師と3人の少女の行方をめぐって。でも、ほんとうは、ほんとうは、ほんとうのところは今でも謎の儘。自分たちの意志で消えたのかもしれない。…

予感

すべてはゼロからはじまる。 彼方から新しくなにかがたちあがってくる予感。 もう一度、もう一度(でも、これはすでに何度目かのもう一度)。 それでもかすかに、かすかに、でも確実になにがかやってくる予感。 今度こそは捉えてみせる。

小走りで

少しこころがとおくまでいっていました。美しいものはたくさん見えているのに、なぜかことばが追いついてくれなくて。目に映るものが美しければ美しいほど、ことばがどんどん遠くなっていくような感じ。それはいまでもつづいているのだけれど、今夜は少し力…

世界の一瞬

日曜日、髪を切って参りました。もう何度目かの青山のサロン。カラーリングを担当してくれているお兄さんとは、細江英公がきっかけでいつも写真の話をして。この前は「ガウディの宇宙」を、今回は篠山紀信「三島由紀夫の家」という写真集を傍らにカラーリン…

渡辺温「可哀想な姉」 [本] 

きっと気に入るのではって、コピーをいただいた。たしかに残酷とは、こういうものをいうのです! 心理学的分析などをおもわずしてしまいそうな物語だけれど、残酷な部分を楽しみながら読み終えます。だって、この「わたし」の残酷さ、きっと誰しもが共感でき…

せかい

ねむらなくたって、ねむれなくたって、世界は絶えずうつろいつづける。わたしでないのなら、いったいこれはだれが見ている夢?訝しみながら畏れながら今日も一日がはじまる(ほんとうはまだ少し怖い。覚めきっていない夢の世界の残像が意識を混濁させている…

長い長い眠りだった。そこで夢見られていたものはこうだ。 「私は死んで、一冊の完璧な書物として生まれ変わる」。(松本圭二「アストロノート」『アストロノート』より) 今日響いてきた言葉。この自分が一冊の書物であったなら、誰かに繙かれ、読み解かれ…

「あたしも人形なんだわ。エンズビルに作られた人形よ。そうなんでしょう?」 「きみは生きている。人形なんかじゃない。ちゃんと熱い血が流れている。どうして泣く?人形なら泣いたりはしない」 「泣くように作られた人形だってあるわ」 (神林長平『あなた…

魔除けだといってとても素敵なお守りを買って貰う。怖い夢を見ないように? そうでなくても嬉しい嬉しい。眠れば悪夢しか見ないのだから、だからせめてこの現実が怖い夢ではありませんように。

しあわせ、とくちにするよりも、こうふく、という響きのほうが、何故かせつなくて美しいような気がしてならない。