37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

山本タカト展

お慕いしているお姉さまに山本タカト展のオープニングへ
お誘いいただいたので、ルーサイト・ギャラリーへお出かけ。
山本タカト氏の原画をみるのははじめてなので、胸が高鳴ります。
会社のお疲れ会で徹夜で呑んでいた(!)のもなんのその、
浮き立つ心を抑えながら浅草橋の会場に着きました。

…会場で出会ったのは、陵辱され拷問を受けていても、
なにかに魅いられた瞳をしている少年少女たち。
そういう目に合わされているその相手にまるで恋でもしているようです。
彼ら彼女たちを辱しめている相手の姿は絵の中に描かれはしないけれど…
でも一枚の絵の中に在る世界はまぎれもなくその二人の緊張感からこそ成る世界でした。描かれたひとりと描かれないもうひとりとの。

悲しげなくせにどこか恍惚とした表情のその子たちに囲まれていると、
いつのまにかからだがふるえています。
からだが震えるから、まだ反応してくれるから、
そうなってようやく、奇跡のようにその世界が在ることが痛いくらい実感できるのです。

だから、いま震えているのは恐いからではない、恐いのではないの。
山本氏の世界に吸い込まれそうになりそうになる自分を抱きしめながら、次の絵にうつります。

…いつもここにくると夢を見ている気になります。
この家に流れている時間が、きっとそういう性質【たち】のものに違いありません。
ちょうど去年の今頃も恋月姫様の展覧会があって、ここに呼んでいただいたのでした。
あれからもう一年がたつのが信じがたいのです。
ワインではなく、この少女たち少年たちの瞳に酔わされながら、
過ごす今日もまた、夢のようです。

いいえ、きっと夢になります。
今日が過ぎればまた夢で、この時間に何度も還ることができる。
だから、夢と同じになる。
そのときはきっとわたしも、今日の少年少女たちと同じ瞳をしている。
快楽と同じ次元まで痛みを引揚げることができたなら、同じ表情をしている。

今日見る夢を楽しみに、新刊画集『殉教者のためのディヴェルティメント』を
胸にしっかり抱えておうちに帰ります。

殉教者のためのディヴェルティメント (Pan‐Exotica)

殉教者のためのディヴェルティメント (Pan‐Exotica)