37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

夜の永さ

どんなにお話をしてもらっても、ぐるぐると縛ってもらっても、首を絞めてもらっても、完全には消え去ることのない恐怖。精製された硝子に閉じ込められた気泡のように、永遠にそこに眠り続ける不安。だから、わたしの恋人、もっと、もっと、もっと、お願い。言葉よりも縄よりも指よりも、強いものがあるなら。魂が身体から離れて迷子にならないように、心が血肉の檻から逃げ出してしまわないように、わたしに楔を打ち込み続けてください。決して朽ち果てることのない楔を。




 (ねぇ、ちゃんと聞いてる?)




……いいえ、ちがう、ちがうみたいです。やはりそれを求めずにはいられないよう。それ、たとえば、ゼロになること、真空になること、充たされること、あるいは完全な絶望と虚無と恐怖に侵されることと同じことであったりもするそれ。それがなにかいまだはっきりとわからぬままに、こんなにも渇き続けています。もてあましています。欲しています。
だから、一刻もはやくここから解き放ってください。鎖をはずす鍵をいっしょにさがしてください。背中でふるえる翅を慰撫してください。
せめて目を閉じている間、魂だけでも、この果てしのない「世界」をどこまでもどこまでも飛んでいけるよう。