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読書と映画の備忘録

ベル・ジャー

ベル・ジャー (Modern&Classic)

ベル・ジャー (Modern&Classic)

「これは全部、悪い夢だったって思いましょう」
悪い夢。
ベル・ジャーの中で、死んだ赤ちゃんみたいに虚ろに立ち止まってしまった人にとっては、この世界そのものが悪夢なのに。
悪い夢。
私は全部憶えている。
(中略)
きっといつか、「忘れる」ということが、やさしい雪みたいに、すべてを覆って麻痺させてしまうだろう。でも、あの痛みは全部、私の一部。あれは懐かしい心の風景。

シルヴィア・プラス、青柳祐美子訳『ベル・ジャー』河出書房新社、2004)

夢と現実を往還する日々、痛みだけが増殖していく。
でも、なぜかその痛みを恋しがってしまう瞬間があって・・・その行為でなにかを確かめるために。だから、「忘れる」という行為から、いつもするりと逃れられるよう、軽やかになれる術【すべ】を探しつづけている。