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読書と映画の備忘録

メッセージ

ここにないもの―新哲学対話「それでさ、そのもどかしさっていうのは、そこまで言葉で言い表したからこそ、姿を現したものなわけだ。空の色を〈青〉ってことばで言い表そうとするから、それじゃあ言い切れないもんが見えてくる。で、そいつはずっとそのまま言い表せないのかっていうと、たぶんそうじゃない。〈透明な深い青〉とか言ってみると、そこであらためて色の透明さとか、深さみたいなもんが姿を現して、〈透明〉ったっていろんな透明があるだとか、〈色の深さ〉って何だとか、ことばは、何かを語ることで、語りきれていないものを影のように差し出してくる。光が影をつくるように。そして光だけが影をつくるように―」
野矢茂樹『ここにないもの 新哲学対話』大和書房、2005)


わたしの言葉もいつもそうでありたい。ここにないなにものかを差し出し、示唆するようでありたい。たとえほんのわずかでも、かすかでも。 会話のひとつひとつ、書いていく文字のひとつひとつに、細やかな注意を払いながら・・・いつかだれかに伝えられますように。届きますように。 そして、だれかとは・・・「他人」ともうひとり、未来のわたしのこと。 これはまだわたしでない、一時間後の、今日の夜の、あるいは明日の朝の「わたし」への、メッセージ。