37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

言葉は削ぎ落とされて削ぎ落とされて美しくなる

歌人佐藤弓生さんから歌集をいただきました。まごまごしているうちに買いそびれてしまっていたところ、送っていただいて大恐縮ながらも嬉しくて大感激。装丁も帯の色合いも個人的にすごく好きで、ずっと眺めていたくなるとても素敵な本。とても繊細で壊れやすい宝物をもらったみたいで、そうっとしか本に触れられません。

 こんなによく晴れて気持ちのいい日、奇【くす】しくも一冊の本が手元にある。言葉は削ぎ落とされて削ぎ落とされて垂直方向にどこまでも伸びていく。天の高みへあるいは冥く深いところへと。とりとめもなく溢れ拡散していく言葉を制御し、奥行きをさぐっていく思考によって、たった36文字に凝縮された世界は、だからこそ掌の上でよりいっそう鮮烈に輝く。
 指を遊ばせながら、ぱらぱらとページの間に見え隠れする言葉たちはどれもこれもが眩しくて眩しくて、思わずまばたきをせずにはいられない。目蓋を下ろした瞬間、この世界が消えはしないかと何処かで恐れながらも。
 言葉は削ぎ落とされて削ぎ落とされて美しくなる。

佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=200607000256