長い長い眠りだった。そこで夢見られていたものはこうだ。
「私は死んで、一冊の完璧な書物として生まれ変わる」。
(松本圭二「アストロノート」『アストロノート』より)
今日響いてきた言葉。この自分が一冊の書物であったなら、誰かに繙かれ、読み解かれ、開示されてみたい、と想う。でも、わたしにだけしかわからない言語で記されているこの書物を、読み解き、頁を繰ってくれるひとは現れるのでしょうか。その言葉をわかってくれるひとが、この世界にどれだけいるのでしょう。いないともいるとも断言できない不安と恐怖。それでもそのなかにあるかすかな期待にすがって、わたしは揺れ動きつづけるのです。2006年、萩原朔太郎賞受賞。