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読書と映画の備忘録

ビアンカの手

いちばん好きな恋愛小説はなんですか? と聞いたら、シオドア・スタージョンビアンカの手」という答えがかえってきたので、「ビアンカの手」を読む。

 町の雑貨店で働く青年ランは、店を訪れた白痴の女の子ビアンカの両手に恋をしてしまう。思いあまった彼は、家にまで押しかけてとうとう彼女と結婚する。幸福の絶頂にいた彼が最後に得た究極の愛の成就とは?

いちばん愛しているものによって、人生を終わらせてしまうラン。その死の瞬間はおそらくとても幸福で、何の抵抗もなく安らかに逝けたのにちがいない。愛する存在によって死を迎えること。それは、自分の生を悔いなく全うしたということ。純粋な愛と生と死はこんなにも近い。それは恍惚感に溢れていて、羨ましくさえある。

そういえば、このあいだ読んだ内田善美万聖節に黄金の雨が降る」も、最後は自分の意志で生死を選べた男の子の話だった。彼は自分より大事なものを見つけ得たから。だから、選べた。でも最初から最後まで、自分が世界に受け入れられない者だと悟っている彼が、読んでいてとても切なかった。

ところで、これを読んでくださっている貴方、貴方のいちばん好きな恋愛小説は何ですか?

海を失った男 (晶文社ミステリ)

海を失った男 (晶文社ミステリ)