ビアンカの手
いちばん好きな恋愛小説はなんですか? と聞いたら、シオドア・スタージョン「ビアンカの手」という答えがかえってきたので、「ビアンカの手」を読む。
町の雑貨店で働く青年ランは、店を訪れた白痴の女の子ビアンカの両手に恋をしてしまう。思いあまった彼は、家にまで押しかけてとうとう彼女と結婚する。幸福の絶頂にいた彼が最後に得た究極の愛の成就とは?
いちばん愛しているものによって、人生を終わらせてしまうラン。その死の瞬間はおそらくとても幸福で、何の抵抗もなく安らかに逝けたのにちがいない。愛する存在によって死を迎えること。それは、自分の生を悔いなく全うしたということ。純粋な愛と生と死はこんなにも近い。それは恍惚感に溢れていて、羨ましくさえある。
そういえば、このあいだ読んだ内田善美「万聖節に黄金の雨が降る」も、最後は自分の意志で生死を選べた男の子の話だった。彼は自分より大事なものを見つけ得たから。だから、選べた。でも最初から最後まで、自分が世界に受け入れられない者だと悟っている彼が、読んでいてとても切なかった。
ところで、これを読んでくださっている貴方、貴方のいちばん好きな恋愛小説は何ですか?
- 作者: シオドア・スタージョン,若島正
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2003/07/11
- メディア: 単行本
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