残雪を読みながら
残雪。あなたは不思議な作家。あなたの文章は、ふとした日常生活のなか、甦ってくる。残り香のように、知らぬ間にそばにより添っている。かすかに、けれど決して消え去ることのない異端の匂いを漂わせながら。
残雪、canxue、日本人であるわたしには発音できない音。推し量ることのできない異国の単語。だが、そのひびきはすばらしく美しい。
あなたの歩んできた人生、それはあなたのなかの何かをゆがめながらも、美しく鍛えていった。それこそが、あなたの書く物語、ここに届けられた手紙。
わたしは、読む。失われた秘密を繙くように、頁を捲り、あなたを読み解き、その心が描く軌跡を辿る。あまりにも明確に示された指標、言葉、言葉たち。それらはまた新たな世界に意識を連れ去っていく。
残雪、CANXUE、わたしには決して叫べない音。辿り着けない世界。だからこそ、いつまでも耳に焼き付いて離れない名前、残雪。
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