『ネクロフィリア』と『キスト』
ガブリエル・ヴィトコップ『ネクロフィリア』を読む。わたしの精神はこの手のものを有無を言わさず喜ぶ傾向にあるのだけれど、40ページ読まないうちになんだかつらくなってきた。
理由は明白。死者や死者に対する性交感覚などの表現はとても美しいけれど、肥大化した自己の視線で物語世界が閉じられているから。他者にひらく回路がないから。日記という形式の採択がそれを増長させている。
あれ、でも、こういうものって、苦手だったっけ、わたし?でも、最後まで読めていない。読み続けるべきか。珍しいことだ。
つい先日、あるひとに『キスト』というネクロフィリアの女性が主人公の物語をすすめてみた。そのとき、かなり女性向けの内容かもしれない、といわれたのでした。でも、そのひとは物語ではなく映画を見たとのこと。わたしは映画は未見です。でも、そういわれてみればそうかもと、本を引っ張り出して読み直した。
女性のネクロフィル(屍体愛好症)は珍しいというけれど、本当? 読みかえして思ったのは『キスト』には、死者への、つまりは他者への畏怖があるけれど、その対極が、ヴィトコップ『ネクロフィリア』のような気がする。どちらも著者は女性なのですけれど。
とはいえ、わたしはいつも性差より個人差のほうが大きいと思い、そのように世界を読みたいと思っている人間なので、ここで使っている「女性」は単なる記号だったりします。
- 作者: ガブリエルヴィットコップ,野呂康+安井亜希子
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- 発売日: 2009/05/22
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