37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録


夏の光はとても強くてまぶしいから、どの季節よりもくっきりと鮮やかな記憶を心に焼き付けていく。フラッシュの閃光がフィルムを感光させ、景色を永遠のものとしてしまうように。あたまのなかで再生すれば、時間が戻ったのかと錯覚しそうになる。

光がまばゆければまばゆいほど、息を呑むような美しさで記録されていく思い出。昨日見た夢のようにすぐそばにある気がするのに、残るのはその余韻だけ。目が醒めたら、そのときにはもう夢の中にいるのではないことに気づいてしまう。だから、夏がいちばん淋しい。

夏には生命の退廃と横溢がある、と言っていたのは誰だっただろう。ひとつのものの両端に同時に存在している気持になる季節。