37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

部品市場にて


仕事の打ち合わせ帰り、秋葉原の喧騒を逃れて、部品市場。


最初に来たのは、上京してまもなく、大学に入ったばかりのころ。目的は、鉱石ラヂオをつくりたかったからだった。必要な部品をちゃんとリストアップしていったと思うのだけれど、目的のものがどこにあるのか、目の前のものがわたしの欲しいものと同じものなのかさえよくわからず、何も買えないまま狭い路地を歩き回った。


でも、大小色とりどりさまざまな宝石のような部品が無数に並ぶのを眺めているだけでとても楽しかった。電気に照らされて、冷たく鈍く光る機械の内臓たち。真昼でもここに日光は差し込まない。店頭に何気なく魔道書や失われたアークが混じっていてもおかしくない、魔法の道具といわれても信じてしまいそうな魅惑的なものが売られている妖しく薄暗いバザール。それらが何に使われるのか、精確に理解できないわたしには、この路地が今でもそんな風にも見えるのです。
わたしもここでパーツを買い集められて、誰かに組み立てられたモノだったらよかったのに。ねぇ、そういう設定ありませんでしたか、かみさま。


「なにかおさがしものですか?」

「わたし、わたしの足りないパーツを探しにきたんです。……欠けているのが何なのか自分でもまだよくわかっていないのに。でも確かに欠けたままなんです、とてもとても大事な何かが」

「おさがしのものがあるといいのですけれど、部品の品揃えは世界一ですから」

「……はい。見つけます、必ず」