37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+* 謹賀*新年 *+



遅ればせながら、あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。今年もご挨拶できる、ただそのことがうれしいお年始です。

書く、といういとなみが息をするようなものだったと気づかされます。世界をほんの一瞬だけ、てのひらにのせるために。その瞬間がないと、きっとすごくここは虚しい、でも、それが一秒の一万分の一でもあれば生きていける。ただ内面にだけは誠実に、素直に、自分の言葉で、この世界を展【ひら】いてゆけば、その瞬間はまたきっと訪れるのだと、今はそう信じたい。

幼い頃から、いままでずっとそうだったようにたぶんこれからも、根源的な不安と恐怖に怯えながら、ときどきは消えたくなりながら、それでも存在しているかぎり、言葉は音楽のようにわたしのなかで響いていくでしょう。未知の音を探しながら、曲を奏でようとするでしょう。あるときは不穏に慄きながら、あるときは溢れそうな悦びを交えながら。

だから、わたしはわたしだけのことばを、わたしのうたを、さがしつづけます。まだ旋律にはならない、弱い音ばかり、でもそれだけを頼りに、手探りで今日も歩きつづけます。歩かなければ。
いまはそれしかできないもの、ちがう、それだったらできるもの。

たとえ宇宙の暗闇にひとり抛りだされてしまったとしても、人類最後のひとりになったとしても、最期までわたしはわたしの音楽を忘れない。わたしにはわたしのうた、あなたにはあなたにしかうたえないうた、いつもそれを探している。ここはまだ終わらない旅の途中。



※画像=大槍葦人「silent prayer」『LITTLE WORLD』より、昨年のSchatz kiste さんの展示でいちばん好きだった作品。