37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+東京鎌鼬と、静かで透明な

   

【BLDギャラリー@銀座】
第二期 「シモン 私風景」 2月1日(水) - 2月26日(日)

戦後の東京の「記憶の記録」を意図して70年に撮影された《シモン 私風景》。記憶を生んだ東京の風景を背景に四谷シモンが異化作用として登場することで、その土地の根源的な記憶を表現する試みであり、同時に細江自身の東京という土地に対する「記憶の記録」、つまり細江自身の私風景でもあります。


銀座で開催中の細江英公写真展のトークイベントにいってまいりました。いまは第二期 「シモン 私風景」ということで、シモンさんと白石かずこさんのトークイベントです。


裏コンセプトは、「東京鎌鼬」だったそう。40年前の東京下町とシモンさん。シモンさんは、あるときはとけこんで、あるときは異物として風景をかきまわしていました。写っているのは、もうすでに消えてしまった町並みや人々……、なのに、写真のなかにはずっとその風景がある。永遠に焼き付けられている。わたしのしらない東京、もう地上にはない東京。でも、たしかに今こことつながっている東京。そんなことがやっぱりふしぎです。

今度、写っていた下町を歩くときは、昔と今を心のなかでかさねながら歩いてみたい。過ぎ去った時代の気配を探し、つみかさなっていく時間を感じながら。


印象的だったのは、おふたりのトークのことばの瑞々しさ、柔らかさ。人形について語ってくださった言葉は、胸に響きました。これからもそうでありますようにと、強く思う一言もありました。


そして、嬉しいことに会場の出入り口では、シモンさんの人形がお出迎えとお見送り。 つい、美少女人形と書こうとして手をとめます。ちがう、美少女なんかじゃない。近年のシモンさんの人形は、すでに性別や年齢を超えている。ひとのかたちをした、とても静かで透明な、なにか。


……たぶんあなたは、これから人間の生きる時間も超えて行くのですね。
また、どこかでお会いしていただけますか?
たとえば、来月のエコール・ド・シモン展で。あるいは今夜の夢の中で。