37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+金木犀の咲く夜に

 


金木犀の香りがしてくると、ようやく十月になったのだと思います。真っ先に思い出すのは、住んでいた家の庭にあった、何十本もの金木犀がいっせいに黄金色の花を咲かせてまぶしかったこと。寝室、台所、食堂にバスルームと、家中が、花々の香りで充たされていたこと。両手いっぱいに花々をすくっては、星屑のようにまき散らして遊んだこと。  

金木犀の香りをいっそう濃く感じてしまうのは夜。昼より感覚がいっそう研ぎ澄まされる時間だからなのだと思います。会社帰り、最寄りの駅からおうちまでの道を歩いていると、そこかしこから漂ってくる。お花の香りに酔ってしまって、とてもいい気分。香りに誘われて、ふらふらと、植えられている金木犀たちを尋ね歩くので、いつもより帰宅時間が遅くなってしまう。花の香りに陶然としながら歩く夜道は、異界にまで通じているかのよう。心に眠っている、遠いところへの憧れをくすぐられて、歩き続けてさえいれば、ここではないどこかへとたどり着けてしまえそうに思えてきます。どこまで歩いてみようかなと、現実と幻想の境目を楽しくお散歩している気分です。

昨晩は、見事に咲く金木犀の木を見付けました。右のお写真です。リデルがたたずむとしたら、きっとこんな金木犀の木の下。十月が好きな理由の一つは、金木犀が咲くから。左は、iPhoneにとりつけたマクロレンズで撮影してみました。ちいさな花は風に揺れて、なかなかうまくとれませんでしたが、これが最善の一枚です^-^;
そうそう、ネットで桂花茶というのを見付けました。金木犀の花を乾燥させてお湯を注ぐというもの。いわゆる花茶。お茶葉以外のものからつくられる番外茶という分類にはいるお茶だそうです。
花を食すのは、いつもどこかそこはかとない背徳感があります。本来眼球で愛でるものを食べてしまう。禁忌を犯しているような感覚。スミレの砂糖漬けや、薔薇の花弁のジャムなど大好きなのですが、美味しいかといわれましたら、もっと美味しいものがありそうな気もいたします。そのうち金木犀のお茶を入手して、寒い日にでも淹れてみましょうか。いましばらくは、この香りを堪能しつつ、過ごす秋です。