2007-11-24 蜜のあわれ[本] 「あたい、何時死んだって構わないけど、あたいが死んだら、おじさまは別の美しい金魚をまたお買いになります? とうから気になっていて、それをお聞きしようと思っていたんだけれど。」 「もう飼わないね、金魚は一生、君だけにして置こう。」 「嬉しい、それ聞いてたすかった。あたい、それではればれして来たわ。何処にも、あたいのような良い金魚はいないわよ、お判りになる、おじさま」 (室生犀星「蜜のあわれ」『蜜のあわれ/われはうたえどもやぶれかぶれ』講談社文芸文庫、1993)