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読書と映画の備忘録

蜜のあわれ[本]

「あたい、何時死んだって構わないけど、あたいが死んだら、おじさまは別の美しい金魚をまたお買いになります? とうから気になっていて、それをお聞きしようと思っていたんだけれど。」
「もう飼わないね、金魚は一生、君だけにして置こう。」
「嬉しい、それ聞いてたすかった。あたい、それではればれして来たわ。何処にも、あたいのような良い金魚はいないわよ、お判りになる、おじさま」
室生犀星蜜のあわれ」『蜜のあわれ/われはうたえどもやぶれかぶれ』講談社文芸文庫、1993)