37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

2007-11-24から1日間の記事一覧

ステーシー[本]

詠子の笑顔は、ステーシー化する直前に少女たちが見せる典型的な表情だった。まるでこれから観覧車にでも乗り込むかのように、少女たちは死を前に何故かしら多幸感に包まれた笑顔を見せる。これから自分の肉体が、歩きまわる忌まわしい屍となることがわかっ…

葬儀の日[本]

「本当に楽か?」灰色の髪の男が言った。 「疲労を感じさせないところが罠なのさ。まだわからないだろうけれど。聞け。そいつを知ったことでおまえは充足する。有頂天になる。満たされる。おまえの言う欠如感覚が消えるからな。だが同時にもうそれ以上身動き…

マダム・エドワルダ[本]

まったく思ってもみなかったことなのに、断末魔の時が始まっていることを私は「知っていた」。私は苦しみを受けいれ、苦しみたいと思い、もっと先まで行きたい、うち殺されてもいいから、「空虚」のなかにまで行きたいと願った。私は知っていた、知りたかっ…

蜜のあわれ[本]

「あたい、何時死んだって構わないけど、あたいが死んだら、おじさまは別の美しい金魚をまたお買いになります? とうから気になっていて、それをお聞きしようと思っていたんだけれど。」 「もう飼わないね、金魚は一生、君だけにして置こう。」 「嬉しい、そ…