鋏
◆鋏
鋏を買いました
世界と自分を切り離すための、
いつでも身につけておけるちいさな鋏を。
◆世界を
世界を遮断してくれるあの指が恋しい。
意識がとぎれるあの一瞬の空白に還りたい。
◆夢の中へ逝って
夢の中に逝ってしまったひとの物語を読みながら、気付く。この世界が決して嫌いなわけではないということ。むしろ、とても優しかったり美しかったりする瞬間だってあるし、愛しいものだって、たくさんある。
でも、美しいものや綺麗なものを知ることが出来るのは、その反対のことも、数え切れないくらいたくさん知っているからだ。
世界はとても醜いし、気をつけていないと、すぐに穢いもので充たされてしまう。そして、此処はほんとうはとてもとても怖い処だったりもする。美しい瞬間に巡り逢ったそのぶんだけ、また同時に世界の醜さや怖さをも引きうけなければならない世界だから。でも、怖がってはいけない。それを怖がっていたら何も、何も見ることは出来ないのだから。
だから、普段は意識的に消去しています。その努力はしています。でも、ときどき抑制がきかなくて、怖いのです。