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読書と映画の備忘録

代償行為

首を絞めてもらうのは、単純に死の代償行為。それ以上でもそれ以下のものでもなかった。それはいまだって変わらない。

殺意がなければ、一般的にはセクシャルな戯れとして読み解かれる、それ。易々と性的興奮の増進と刺激に結び付けられる、それ。

確かに、タナトスとエロスはいつも隣り合わせにある。エロスに浸るとき、いつもその背後に濃厚な死の気配がしのびよってくるのを知っている。タナトスに惹かれるとき、精神を苛む苦痛や恐怖が甘美なものに変容していくのを知っている。

でも、それでもわたしは性的なものがもたらす喜びと、死がもたらす安寧を混同したりはしない。その行為それ自体を性的なものに結びつけることはしない。したくない。

首を絞めてもらうことはあくまでも代償行為であって、死そのものではないから。代償行為を否定しているのではない。けれど、そのものではないということを忘れているわけではないよ。