37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+東雅夫「橋のあやかし、川の怪――水辺の文豪怪談」



綺麗に晴れた日曜日、月島はあいおい文庫で開催された、「橋のあやかし、川の怪ー水辺の文豪怪談」東雅夫氏のトークイベントへ。全面ガラス張りの窓からは、隅田川が水を湛えているのが見えます。そんな景色を背景にトーク中、幸田露伴『幻談』や芥川龍之介『妖婆』が朗読されるのを聴いていると、明るい午後だというのに背筋がなんだかぞくぞく。


目を閉じて聴いていると、ついっと竿が浮かんでは沈むありさまや、妖婆の白髪頭が暗い水に浮かぶ情景が、ありありとまなうらにひろがっていくのでした。目で文字を追うときとはちがった方法で、妖しい世界に誘われていく楽しさ、これが朗読という声色の幻術?よく晴れた日の昼間や夕暮れに、あの窓の外のデッキで朗読会なんて、ロケーション的にはとても素敵だと思う。


梅若伝説のお話などを聞いて、隅田川のほとりは、ますます歩いてみたくなっているお散歩コース。本所七不思議巡りも一度はしてみたい。そういえば、「妖婆」にでてくる鶏鍋のお店「ぼうず志ゃも」の前を通ったのは、昨年の『すみだと怪談文学』講演のときでしたっけ。江戸情緒残るお店だなんて聞いてしまうと、いつか行ってみたくなります。お洒落なダイニングやラウンジもいいけれど、そういうゆかりのあるお店に行くのはとても好きなのです。とはいえ、完全予約制なのだとか。


会場では、上記の『すみだ』講演やほかの会でもお会いできた某氏もいらしていて。この付近の怪談や歴史に詳しくていつも興味深い話をしてくださいます。今回も水と女性と怪のかかわり、泉鏡花についてお聴きするうちに、シネマ歌舞伎を見たくなってしまうのでした。


最後に、古本市で、実はもっていなかった自由国民社『世界のオカルト文学 幻想文学・総解説』を購入、お茶をして帰ります。風はまだ冷たいけれど、おでかけにはうってつけの休日でした。