37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+ウツボラとお誕生日



5月はお誕生日の日に買って一気に読んだ。特典ペーパーつきでした。忙しくて普通どおりの一日だったけれど、そんな日にこの物語を読めたのは幸せ。もうずっと長い間、続きを待っていた物語だったから。


読了後の数日、作品にでてくる女の子みたいな黒いシンプルなワンピースで過ごしていた、それはただの偶然なのだけれど、読みつづけていると、眩暈に襲われて、不意に落下してしまいそうになる。物語という虚構のなかに、この現実と幻想の淡いに。でも、わたしたちは最初からそこにいて、そこにしかいられない。でも同時にそこからだったらどこにでもいける。それはたまらないくらいいとおしくて、狂おしいくらいに切ない場処。わたしたちがたちあいつづけている瞬間、瞬間、今此処のこと。可能性。

…先生 先生のおっしゃる通りですね 人間の認識なんて曖昧なものです 
昨日見た人間の顔もわからない 当然です 実際に違う顔なんですから
毎日毎時毎分毎秒 全ては永遠に変化していて… 同時に 全ては永遠に変化しない
その一瞬こそが全てなんですね


…彼女もよくそんな話をしていましたねえ

――中村明日美子ウツボラ』1より(太田出版、2010)

ウツボラ(2)(完) (エフコミック) (エフコミックス)

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