37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+十月の扉が開いた夜

――金木犀の馨りにつつまれるたびにかならず思いだす物語は、内田善美星の時計のLiddell


十月の扉が開いた。今年、初めて金木犀が咲いているのをみつけたから。これがこの馨りの魔法。熱がさがらないままのくちびるにそっとのせてみるのは、あの少女の名前。金色の花々が咲いているあいだだけなら、許されるような気がして。


誰もがそのひとしか行くことのできない魂の故郷をもっている。わたしもわたしの夢の丘、わたしだけの美【かな】しく美【うつく】しい場処にいつかたどりつけることを信じてる。帰還の前には、そこから手紙を書くから受けとってね。


さぁ、夢の中でなら貴女に会えることも叶うはず、きっとね、今夜の約束。
おやすみなさい。



星の時計のLiddell (1)

星の時計のLiddell (1)

夢の丘 (創元推理文庫 (510‐2))

夢の丘 (創元推理文庫 (510‐2))