+十月の扉が開いた夜
――金木犀の馨りにつつまれるたびにかならず思いだす物語は、内田善美『星の時計のLiddell』
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十月の扉が開いた。今年、初めて金木犀が咲いているのをみつけたから。これがこの馨りの魔法。熱がさがらないままのくちびるにそっとのせてみるのは、あの少女の名前。金色の花々が咲いているあいだだけなら、許されるような気がして。
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誰もがそのひとしか行くことのできない魂の故郷をもっている。わたしもわたしの夢の丘、わたしだけの美【かな】しく美【うつく】しい場処にいつかたどりつけることを信じてる。帰還の前には、そこから手紙を書くから受けとってね。
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さぁ、夢の中でなら貴女に会えることも叶うはず、きっとね、今夜の約束。
おやすみなさい。
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