37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

+……夢のくせに。夜に見たものの話。


こんな夢をみました。

ベッドで寝ていたら、中年くらいの中肉中背の、 作業着みたいなオーバーオールを来た男性が、そばに2人たっていて、手に持っている電動チェーンソーで、嬉々としてパジャマを着たままのわたしの四肢を切断しはじめました。あまりにも唐突だったので呆然としながらも叫びました、夢の中で。

「ええっ、これ夢ですよね、夢でしょ?」
「夢だけど、怖いでしょ、痛いでしょ、ほら」

と、ますますにこにこして、わたしの身体を切っていくのです。手首や足首、ひじ、ひざなどの関節ごとに斬っていたから、一本の手足で何度も楽しむのね。 チェーンソーの振動で、なかなか上手く叫べなかったりした。そして、夢だってわかっているのに、夢なのにけっこう怖い。しかもなんとなく痛い。痛いというより、ショックで無痛になっているというような設定がぼんやりとあって。2人があまりにも延々と楽しんでいるので、

「わたしの夢のくせに」といったら、
「気に入らないならあんたの夢だから好きにできるよ、したらいいよ、なんでできないの」

と言い返された!……でも、わたし、明晰夢は一度しか見たことないし、夢を好きにできたこともほとんどないもの。しばらくして満足したのか、チェーンソーを身体にあてられることもなくなったので、わたしも転がっているのに飽きてきて、手足の無くなった血だらけの身体で窓のところまで、這っていってみました。外を見れば、なんと一面緑の野原。そこで、いつもと違う、やっぱり、これは夢なんだって、また思ってほっとします。


その野原では、何台ものジープに数人ずつ男性が乗っていて、たくさんの女の子たちをひき殺そうとしていた。女の子たちはなぜか吾妻ひでお先生が描くような姿の少女たち。そのおかげか、逃げ回っていたけれど悲壮な感じはなかった。ヘンリー・ダーガー描く戦場みたいなポップ且つ凄惨な雰囲気。ヴィヴィアン・ガールズ!みたいな。助けたい、なんとかして助けなくては、わたしの夢だからわたしがなんとかしなくては。なのに、そう念じても念じても、どうにもできなくて面映くてとても苦しくて。自分のうなされる声で目覚めたら、何がそんなに悲しかったのか悔しかったのか泣いていたのに気づきました。

思わずはっとして、手足を確かめたらもちろん無事でした。ちゃんとついていました。けれど、ショックが大きいとぼんやりとしか感覚が起きないこともあるし、記憶がとぶこともある。現実に手足がなくなるようなことに遭遇したら、この夢みたいにぼんやりとした感覚しかなくなってしまう、ということはもしかしたらあるのかもしれないと、そんなこともふと思います。


でも、夢にここまで反抗されるなんて。やっぱりひどい夢。いつかもう一度同じ夢をみて助けに行くとこっそり誓います。あの夢の世界で逃げ続けている女の子たちのこと。ほかの誰が知らなくても、わたしは知ってしまったから。