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読書と映画の備忘録

村上春樹『太陽の南、国境の西』

「私はここに来るか、あるいはここに来ないかなの。ここに来るときにはわたしはここに来る。ここに来ないときは――わたしは余所にいるの」「中間はないんだね」「中間はないの」と彼女は言った。「何故なら、そこには中間的なものが存在しないからなの」
(中略)
「これはとても大事なことだから、よく聞いて。さっきも言ったように、私には中間というものが存在しないのよ。私の中には中間的なものが存在しないし、中間的なものが存在しないところには、中間もまた存在しないの。だからあなたは私を全部取るか、それとも私を取らないか、そのどちらかしかないの。それが基本的な原則なの」

――村上春樹『太陽の南、国境の西』(講談社文庫、1995)