37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

2008-07-22から1日間の記事一覧

桜庭一樹『ブルースカイ』

「わたし、あなたの、願いを叶える」 クリスティーネは落ち窪んだ瞳でわたしを見上げた。わたしは続けた。 「もっと、ずっと幼いころから、わたしはあなたに敬意を感じ続けてきた。あなたの美しさと善良さに憧れていた。わたし、約束する」 「マリー……」 「…

アンナ・カヴァン『氷』

力を使い果たした少女は、もう終わりだ、起き上がれない、これ以上走れないと思う。だが、緊張しきった肉体は、容赦なく少女を立ち上がらせた。抵抗しえない運命の磁力に引かれて、少女は否応なく進みつづけなければならなかった。少女が最も弱く傷つきやす…

リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』

ヴァイダは自分の体に向かって、雨が降るときのような身振りをしながらいった。「これはわたしじゃありません。それがやることに対して責任を負えるわけがないでしょう。ほかの人からなにかを得ようとしてこの体を利用する気はありませんし、そんなこと一度…

村上春樹『太陽の南、国境の西』

「私はここに来るか、あるいはここに来ないかなの。ここに来るときにはわたしはここに来る。ここに来ないときは――わたしは余所にいるの」「中間はないんだね」「中間はないの」と彼女は言った。「何故なら、そこには中間的なものが存在しないからなの」 (中…