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読書と映画の備忘録

喪失

たとえ目の前にある世界や自分が次の瞬間になくなってしまうのだとしても、この意志は、悔いがのこらない。そう思いや覚悟を決めた瞬間、同時に身体が動いている。思った通りに。そのままに。すべては喪われる可能性を常に孕み、だからこそ一瞬一瞬は疎ましく穢らわしくもあり、同時に堪らなく愛しい。

なにものをももたず、なにものであるところのものでもないわたしは、いつもいつもすべてを喪いつづけ、その背理故に、同時にそのすべてでありつづける可能性をもつことができる。
喪失の苦しさとひきかえに全身の肌で球体感覚の浮上を感じつづけることができる。

いつもそれを、それだけをわすれない為に、永遠に続くような強い痛みに引き裂かれつづけていたい。もっともっと、強い痛みに出逢いたい。もっともっと振れさせて欲しい。生と死のあいだを。その間の距離が長ければ長いほど、わたしは遠くにあるものを思い続けることができるのです。なすがままにしておけば、いくらでも忘却できる生に抗いつづけるために遠くを思い続けることができるのです。