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読書と映画の備忘録

ヴァイオレット&クレア

ヴァイオレット&クレア

苦しみを素材としてとらえると、世界観はガラッと変わる。素材になる、と思えば、どんな苦しみにだって耐えられる。それ以上の苦しみなんて、あるとも思えないし、思いたくもない。

そして、創造的表現活動の一環として、腕をカミソリで切った。ほんの軽く、切ったというよりはこすった程度だけれど、血がどんなふうに出るのか見てみたかったし、カミソリ傷があればタフにみえる。わたしと違って、骨までカミソリを沈めてしまう子もいる。自分自身の奥深くがどうなっているのか知りたいのだ。なぜならそこは、自分自身のすぐそばなのにやっぱり遠くて、すごく危険で、あまりにも自分だから。そして、その世界だけが自分のものだから。
フランチェスカ・リア・ブロック/金原瑞人=訳『ヴァイオレット&クレア』主婦の友社、2003)


なんとなく気分が鬱いでしまう日は、本屋さんに立ち寄る。お洋服やコスメカウンターも士気をあげてくれるけれど、こんなに遅くてはもう開いていない。並んでいる背表紙とにらめっこしながら、その日響いてくる一冊を探して、本棚の間をうろうろすること、30分あまり。ようやくその一冊をさぐりあてます(でも、全然みつからないときもあって、そんなときは何も買えずにすごすごと帰るしかないのです)。たった数百円で、なんだかその書物が抱えている世界をひとつ、まるまる手に入れたような気になって、にこにこと急ぎ足で帰りました。