「海を飛ぶ夢」
「生きることは権利だが、わたしには義務だった」
尊厳死を求める四肢が麻痺した主人公ラモン*1と、その弁護を申し出た女性弁護士フリア。彼女もまた、決して治ることのない病に苦しみ、ラモンとともに尊厳死を決意する。ラモンの詩集ができあがったらそのときにという約束で――だが、できあがった本の見本と共に死ぬためにもどってくると約束したフリアは、ラモンの前に現れなかった。
ラモンは最後フリアの手を借りずに尊厳を求めて死ぬ。一度死を決意したフリアは、痴呆症を発症し、ラモンのことさえ忘れながら、海辺の家で夫の献身的な介護を受けながら生きつづける。
ずっと思っていた、もし自分が植物人間状態になったら死を選ばせて欲しいって。でも、ほんとうに怖いのはそうなったときには、その意志を伝える手段さえたたれてしまっているのだろうということ。意志決定が不可能な状態になったら、呼吸などしていたくない。でも、そうなったらそう思うことさえもう出来なくなってしまっているのだろうとも思う。
生きながら全てを忘れていくことと、死ぬことのどちらをわたしは拒むのだろう(いえ、こたえはとっくにわかっている)。
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*1:実話だとは検索するまで知りませんでした。手記が出版されているそうで、そのうち手にとってみます。映画に引用されていた詩がよかったから…