37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

autofiction

わたしがはいっているこの容物を、わたしは自らの意志でときどき傷つけてしまう。かわりはないというのに、痛めつけずにはいられないときがある。なにを求めているのか、自分でもわからないままに。冷たい部屋のなかで静かに、目標を見極める。

この器を好きだといってくれるひとたちの声が耳を掠めたりもする。でも、そんなときにかぎってそのひとたちの顔を思い出すことができない。それはもう絶対に。痛みに撓められて、記憶や意識がすこしずつ、ぼんやりしてくる。わたしが血を流すのは、なにかから薄まりたいからなのか、それともなにかを強めたいからなのか。

こうして、わたしは、わたしを乗りこなせずにしばしば墜落する。目的地に到達する行程は遙かに遠く複雑で、敵は多い。地図を見なければ、何処へ向かっているのか、すぐに忘れてしまう。通信機器はとっくに壊れていて、雑音しか拾うことができない。それとも、壊れているのはわたしの耳のほうなのだろうか。

優秀なパイロットが必要だ、と思う。だが、一旦落ち始めた機体は、いまだに落ち続けている。底のない真空を。もう何年も何年もこの長い日々を。飛ぶことと墜ちることの違いがすでにわからなくなっている。ただ、平行と垂直へ移動していく感覚だけが、等しくなっていく。
もしかしたら、このふたつは同じこと?

だったら、いいな。