37.2℃の微熱

読書と映画の備忘録

2008-01-01から1年間の記事一覧

内田善美@L’ESSAIS LUNATIQUE

◆内田善美@L'ESSAIS LUNATIQUE素天堂さまにご快諾いただいたので、リンクを。いままで封印(?)されていた内田善美についてのエッセイが、素天堂さまのサイトにて一般公開されています。内田善美が気になっている方々は必読。 内田善美ってだあれ?という…

燃えるスカートの少女

◆「癒す人」 カップを手に入れられなかった人たちは火の女の子のところにいった。困ったり、さびしかったり、苦しんでいるときに、かれらは彼女に会いにいった。運がよければ彼女は燃える腕をバケツから出して、手首の先端でかれらの顔にやさしくふれてくれ…

◆鋏 鋏を買いました 世界と自分を切り離すための、 いつでも身につけておけるちいさな鋏を。 ◆世界を 世界を遮断してくれるあの指が恋しい。 意識がとぎれるあの一瞬の空白に還りたい。 ◆夢の中へ逝って 夢の中に逝ってしまったひとの物語を読みながら、気付…

言葉といふものは

言葉といふものは生きている事の不安から、芽ばえて来たものぢゃないですかね。腐った土から赤い毒きのこが生えて出るやうに、生命の不安が言葉を醗酵させているのぢゃないですか。よろこびの言葉もあるにはありますが、それにさへなほ、いやらしい工夫がほ…

autofiction

わたしがはいっているこの容物を、わたしは自らの意志でときどき傷つけてしまう。かわりはないというのに、痛めつけずにはいられないときがある。なにを求めているのか、自分でもわからないままに。冷たい部屋のなかで静かに、目標を見極める。この器を好き…

内田善美を読みました

――訪れる時間の何という美【かな】しさ 『星の時計のLiddell』 あるひとの書庫に閉じ籠もって、えんえんと本を読む。 読みたくてたまらなかったのに、 けっして手が届かず、読むことも叶わなかった物語たちを。読みながら、物語の背後に渦巻いている、豊かで…

The Deadley Doris

G-Schmittという音楽を教えて貰った。それを聞いていて、思わず楠本まきを取り出す。だって、曲名と同じタイトルの漫画を描いているのですもの。考えてみたら、どちらも同じ時代の空気を吸っていたはずで……その時代が酷く羨ましかったり憧れだったりする。80…

触媒

いつのまにか香りを記憶して貰っていた。覚え続けていて貰えるのなら、今度また同じ香りにくすぐられたとき、きっと思い出す。たとえ名前や交わした言葉を忘れてしまってもなにかそこにはないものたちを。香りは言語とは違った回路をもつ記憶や気配や物語の…

柴田宵曲『奇談異聞辞典』

……とうとう買ってしまった。いえ、欲しかったんです。欲しかったの!F氏からこんな本が出るよって、教えて貰ったときから! 2刷りを待ってみようとかそういう煩悩も、本を手にしたら吹き飛ぶ物欲乙女の脳内構造。だから、最近書店には近づかなかったのに!…

夢の場所

本とか映画とか音楽とか原稿とか言葉とか、まだかたちになっていない気配とか、すばらしいものに日々出逢えていて、どこか涙腺と心が緩んでいる。でもそれは、いつもといえばいつものこと。嬉しいこと。 よくばりでよくばりでよくばりなわたしは忘れたくない…

気配

この香りは何ですかって、尋ねられて気づく。最近、EGOISTばかり使っているのに。でも、香りは、かたちがないものだから、気配だから、気付いて貰えると、とても嬉しい。そして、不快感を与えず、気に入って貰えるとなおさら嬉しい。嗜好がこんなにはっきり…

殺してくれる? さもないとわたしたち、永遠にこのままだよ。

……完璧な平和を実現した世界。その閉塞感をうちやぶるために、用意されたショーとしての戦争。その戦闘機のためのパイロット、子供の容姿をしたキルドレたちは、死と再生をくり返し、永遠に死ぬことが出来ない。「スカイ・クロラ」はそんな世界の物語。 一緒…

ビアンカの手

いちばん好きな恋愛小説はなんですか? と聞いたら、シオドア・スタージョン「ビアンカの手」という答えがかえってきたので、「ビアンカの手」を読む。 町の雑貨店で働く青年ランは、店を訪れた白痴の女の子ビアンカの両手に恋をしてしまう。思いあまった彼…

妖怪談義◆初参加

ロフトイベントの妖怪談義に初参加!させていただいてきました。ずーっと何年もいきたかったのですが、いつも行くタイミングがあわずじまい。でもこのあいだのハマーフィルムの宴の興に乗って、とうとう参加してまいりました。 ……この手のものが好きだという…

香水の物語

37℃越えの身体を抱えて、新作香水のチェックをしに伊勢丹へ。空想の亜熱帯の花をイメージしたというラルティザンのリアン、焦げた匂いが香ばしいアニック・グタールのミールアンダント、百日草とスパイスをブレンドしたFLORISのZINNIA……。 でも、リアンはグ…

THÉ APRÈS L'ORAGE

地にしみた雨水が和らいだ香りを目覚めさせ、さわやかさと安らぎで空気を埋め尽くす。紅茶の木を静かに流れる樹液のような甘美で植物的な芳香。きみの血を (ハヤカワ文庫NV)作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,山本光伸出版社/メーカー: 早川書房…

マリアージュ・フレールにて

クリニック帰りに、新宿はマリアージュフレールでお茶を飲む。Opium Hill、芥子の丘という名の青茶を、アイスティで。傍らには、読書中の『きみの血を』。 淡い黄味がかった翡翠色をしているこのお茶は、かつては一面を芥子の花に覆われ霧に包まれた丘の頂き…

悪夢

悪夢にうなされない日がない。毎朝毎朝、震えながら目覚めて、気づく。気づかされる。いつも目が覚めてしまうこの世界が、いちばん恐ろしい悪夢で、できているかもしれないということ。怖い。

幻想の中心

幻想の中心にいたと言ってもらった。そのとき、そのひとに見えた世界が、少しでも美しいものであったのなら嬉しい。 言葉の真の意味で、リアリストである者。彼らだけが、美しいものを夢見ることができる――いや、ちがう。その本当の価値を知っている。それは…

わたしのことを

わたしのことをひきとって、24時間監視したいといったひとがいた。丁重にお断りしてしまったけれど、奴隷にして飼いたいといったひともいました。限定された生活は憧れるけれど、でも、だって、遠くに行けなくなったら、困る。困るのだ。

新社屋

今日から会社は新社屋。あの綺麗な場所から少し遠くなると思うと、ちょっと淋しい。

8月の終わり

夢のようだった8月が終わる。でも、空を仰ぐと真っ青な空に白い雲が眩しい。まだこんなにも夏が残っている。

星の影

たんたんと慣れた手つきで、ものをつくる指先を見ている。瞬く間にそれはできあがった。学研「大人の科学」の付録のプラネタリウム。ちっちゃいながら、1万個の星が輝くしろもの。ぱちんと電気を消すと、部屋中にたちまち無数の星が出現した。手や身体に星影…

浅草、米久

桃をいただいたついでに、お昼を浅草は米久に連れて行っていただきました。集まりをしたときにときどき行かれるところなのだとか。高村光太郎も食した百年の老舗だというお店は、入店するとその数だけ、玄関にある大きな太鼓の音がなる。 どんどん、と、これ…

音もなく

きっちり3秒間だけ意識がとんだ。それも完璧に。全然痛くも苦しくもなかった。すうっとフェイドアウトするように、音もなく消えていったすべて(つまりは身体意識や世界との距離)。意識がないから知りもしないはずなのに、あの3秒間が恋しい。酷く恋しい。…

夜の園

夜、連れられて、いままで歩いたことのない道を歩く。そのひとが案内してくれなかったら歩くことなんてなかったはずの道を。 涼しい夜気に包まれた遊歩道は、人気がほとんどなく静かな水の音しかしない。野良猫がわたしたちの前を走り去っていく。交わす声よ…

STAND ALONE

いつもそうであることを明確に自覚しておかなければ。

突然

どうしようもない衝動に襲われる。深い痛みが欲しい。死ぬまで忘れ得ぬような。

国会図書館

図書館と夏。夏の図書館。この組み合わせが、永遠に美しく思えた今日の午後。

気がついたら

頬をそっと撫でていく風が涼しい。なにも起こらないまま、また夏が終わってしまう。そのことだけが唯物狂おしい。